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わざわざ せっかく わざと

学生達は時々次のような言い方をします。
1 わざわざ作ったのだからたくさん食べて下さいよ。
2 せっかく来てくれてありがとう。
これらの文は少しおかしいですね。

今月は、これらの言葉の基本的な意味と使い方を勉強しましょう。

普通、「わざわざ」や「せっかく」は、動詞を修飾します。どちらも何かを意図して
する(した)という意味があり使い方もほとんど同じですが、ニュアンスが少し違います。

「わざわざ息子のために(時間・お金ををかけて)
スーツを作ったのにぜんぜんそれを着ない。」
「せっかく息子のためにスーツを作ったのに
(喜ぶかと思ったら)ぜんぜんそれを着ない。」
「わざわざ(遠い所を)日本まで来たのだから
日本語がうまくなりたい。」
「せっかく日本まで来たのだから(その
チャンスに)日本語がうまくなりたい。」

このニュアンスの違いは、基本的な意味の違いから
来ているものです。
では、次の段落でこれらの基本的な意味を説明しましょう。

(A) わざわざ

(1)わざわざは、誰かがお金や手間や時間をかけて努力して何かをする(した)という事を
あらわします。

「わざわざ成田空港まで迎えに行く。」
「わざわざ美容院に行ったのに、雨で髪が
くしゃくしゃになってしまった。

(2)もう一つの意味は、「わざわざ」は、ある人がある意図
を持って何かをする(した)という事です。
つまり何かをする時にもっと一般的な方法があるのに
その人は困難なまたは変った方法を選んだ、または、
やる必要がないのにある事をやったという事を
あらわすのです。
「近いのにわざわざ車で行く。」
「橋があるのにわざわざ川を泳いで渡る。」(こんな人はいないでしょうが・・)

(B)せっかく

(1) 話し手が「雪が降った・・」といった時、私達は次の言葉を聞くまでそれが話し手にとって
いい事なのか悪い事なのか分かりません。なぜなら、この文は事実を述べているだけだから
です。
でも、彼/彼女が「せっかく雪が降った・・」と言ったとすると、それは彼/彼女にとって
いい事なのだと言う事が分かり、そういう意味の文が続きます。
「せっかく雪が降ったのだから雪だるまを作ろう。」

このように話し手は、「せっかく」を使って事実(客観的な状況)にそれが彼/彼女に
とって価値がある又は好ましいものである、そして、その状況を無駄にしたくない
と言う気持ちを付け加えているのです。
話し手がその状況をうまく使いたいまたは、期待している事を実現させたい
そんな場合には接続助詞詞「(だ)から)」が よく使われます。
逆に状況が 話し手の期待にそむいた時、好ましい状況が無駄になってしまった時
接続助詞「(な)のに」「(のだ)が」がよく使われます。
「せっかく来てくれたのだからお昼をごちそうします。」
「せっかくいい天気になったのだからピクニックに行きましょう。
「せっかく彼女が電話をくれたのに仕事が忙しくて会う事ができなかった。
「せっかくパソコンを買ったのにぜんぜん使い方がわからない。

(2)せっかくには名詞的用法があります。
「せっかくの・・」と言う場合「・・」には価値があるとか「・・」はすばらしいことだ等
の意味を表します。

「せっかくの休みだからゆっくりしよう。」
「せっかくのごちそうなのにさめてしまった」
「せっかくのお招きですが、残念ながらいけません。」

*わざわざにも又名詞的用法がありますが、この用法はとても限られています。
(誰かが来たとか尋ねてきたことにお礼を言う時だけです。)
(例)「わざわざのお越しありがとうございます。」
「わざわざのお見舞いありがとうございます。」
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さあ、これでこの文章のはじめに取り上げたふたつの文がおかしいと言う事がわかったと思います。

1 わざわざ作ったのだからたくさん食べて下さいよ。
2 せっかく来てくれてありがとう。

文(1)は

「作るのはとても大変だったのだから、たくさん食べて下さい。」と言う意味になります。
お客様に手料理をお出しするのにこれでは変ですし、失礼になりますよね。

「せっかく(あなたのために)作ったのだから、たくさん食べて下さい。」
これならいいですよね。
文( 2)は
意味が成り立たない文です。
「わざわざ来てくれてありがとう。」
こうすれば相手が大変なのに来てくれたという事に感謝するわけですから礼儀正しい言い方だ
になります。
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(C)わざわざ

「わざわざ」と「わざと」を取り違える学生も多いです。
「わざと」は「わざわざ」と同じようにある人が意図的にある行動をするという時使われます。
下の文では意味は大体同じです。
「恋人と一緒だからわざわざ/わざと遠回りした。」
「バスがあるのにわざわざ/わざと歩いていった。」

でも、「わざわざ」と「わざと」の使い方はいつも同じというわけではありません。
「わざわざ」はした事の困難さや苦労を強調すると前に説明しましたね。
でも、「わざと」にはこういう働きはありません。
「わざと」が表すのは意図的にやったという事、そして多くの場合それには隠された本当の
目的があると言う事です。
人の注目や同情を引いたりごまかしたりだましたりするために意図的にある行動をするとき
「わざ」とを使います。
「彼女はわざと彼の足を踏んだ。」
足を踏む事によって彼の注意を彼女に向けようとしているのです。
「あまり痛くないのにわざとその子は大きな声でないた。」
この子は同情をひきたいために大声で泣いたのです。
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( 問題 )

「わざわざ」「せっかく」「わざと」から適当なものを選んで(___)の中に入れなさい。
1 (___) きれいに並んでいたのにバラバラにしてしまった。
2 遠い所を (___) 来てくれてありがとう。
3 (___)覚えたのに試験が終わったすぐ忘れてしまった。
4 彼は怒って(___)大きな音を立ててドアを閉めて出ていってみんなを心配させた。
5(___)お祝いなのだからたくさん飲んで下さい。

...............................
(答): 1 せっかく 2 わざわざ 3 せっかく/わざわざ 4 わざと 5 せっかくの


56月合併号は自動詞他動詞です。ご期待下さい。
電気をつける。電気をけす。

電気がつく。電気が消える。

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